京都人らしさ「声かけ」

 

「イヤ!奥さんお出かけどすか」
「へえ、ちょっとそこまで」
「そうどすか、気ィつけて行っといでやす」
「おおきに、ほな行ってきます」
 この会話、少し変だと思いませんか。「ちょっとそこまで」に対して、「そうどすか」と納得しています。これは別に相手の行き先を聞いてるわけではないのです。
さほど意味はないけれど、笑顔で声を掛ける。ご近所付き合いをする上での最低限のマナー。他人事には深入りしない、お互いに無駄な気遣いはしない。これが京都人の基本姿勢です。この基本が分かっていれば、京都人との付き合いは楽になります。ご近所とは付かず離れずが一番良いのではないでしょうか。

 こういう人間関係も、長い都暮らしの中で培われたものと思われます。

 また、京都には門掃き(かどはき)という習慣があります。観光のポスターによく使われているので、ご覧になった方も多いと思います。朝、玄関の前を箒で掃いている女性が写っているというものです。
 この門掃きにもルールがあって、自宅の前と片方のお隣を少しだけ掃くということです。このルールを一軒ずつ守っていれば、通りがすべてきれいになります。間違っても、お隣の前を全部掃いたりしないこと。気を利かせたつもりが、逆効果になります。次の朝、お隣がまた、貴方の家の前を掃かなければならない。これではお互いに疲れますよね。

 ご近所付き合いは、ルールを守って、気遣いはほどほどに。

 

※このコラムは「月刊 茶の間5月号(よろしおすえ京ことば)」に掲載されたものです。


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