京ことばの特徴(1)

 

「お茶漬けでもどうどす」
京都の人にこう言われても、うっかり本気にしたら「非常識な人」などと後で言われます。本当は早く帰って欲しいという意味を持つらしい。この「イケズ」が京都人の代名詞になってしまいました。
 筆者は言った事も、聞いた事もなかったので、友人達に尋ねてみると、「うち、そんなこといっぺんも言うたことおへん」という答えが返ってきました。本当はどうなんでしょう。
 もれ聞いたところによると、明治時代の落語家が、京都人を面白おかしく伝えるのに、この言葉を使ったらしいのだとか。「当たらずとも遠からず」という感もありますが…。
言いたい事を遠回しに言う婉曲(えんきょく)表現は、京ことばの大きな特徴なのです。
 いくつか例を挙げてみましょう。
誰かの意見に対して、「違うのと違いますやろか」といえば、はっきり反対してるということ。 「お口べっぴん」、これもべっぴん=美人のことだから、褒められているようですが、実は、口ではきれいな事を言ってはいるが、お腹の中は違うと言うこと。ですが、褒められているのではないと分かっていても、腹は立たない。これが京ことばの凄さです。
 どうしてこんな言い回しが多いのかというと、京都は御所を中心に、いつも権力争いが絶えませんでした。その中で、庶民は生きていかなければならない。自分の身を守り、相手をも傷つけないということから、直接的な物言いを避け、婉曲表現が発達していったのでしょう。
 言葉は人を傷つけることもあります。救うこともあります。京ことばを上手に使われることをおすすめします。

 

※このコラムは「月刊 茶の間2月号(よろしおすえ京ことば)」に掲載されたものです。

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