京ことばの成り立ち

 

「京都のことばって、優しくていいですね」ということをよく耳にします。
京都人なのに、あまり京ことばを使っていない人が、旅行などでよその土地へ行ったとき、「おおきに」を連発すると、必ず「京都からいらっしゃいましたの。やさしい言葉ですね」と声を掛けられます。その人はこの言葉を聞きたくて、
「イヤーおおきに」と繰り返し使います。

「京ことば」は、なぜやさしく、きれいに感じられるのでしょう。
ご存知のように、平安京が作られてから、明治維新まで、約千年間、京都は日本の中心でした。室町時代になりますと、御所に食物や衣類などを届けるために、町衆が頻繁に出入りするようになります。
 人が行き交えば、言葉も混ざります。町衆の言葉が御所内に、御所の言葉が町中に出て行くようになります。また、室町幕府が御所の近くにあったことから、将軍の奥向きにも「御所ことば」が広まったと言われています。

 こうして、「御所ことば」と「町衆のことば」が混ざり合って、少しずつ変化しながら、脈々と現代に伝わっているのです。
 今も京都には、御所ことばがたくさん残っています。そのため、独特のゆったりとした響きが、やさしく聞こえるのでしょう。

 その「京ことば」も最近では話す人が少なくなってしまいました。お国ことばは、その土地の文化であり、魂といえます。京ことばという歴史ある文化を、消さずに後世に伝えていってほしい、と願わずにはいられません。

※このコラムは「月刊 茶の間1月号(よろしおすえ京ことば)」に掲載されたものです。
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