ほめことば

「イヤー奥さん、お口べっぴんどすなァ」
「それはそれは、お尻から上手」
前にも少し触れましたが、この言葉はほめているようですが、そうではありません。
前者は口ではきれいなことを言ってるけれど、お腹の中は違うということ。後者はものすごく下手だ、という意味。
 こんなことを言うと京都人は腹黒いと思われるかもしれませんが、そうではありません。ユーモアなのです。言われた方は決して腹が立たないシャレで通じるのです。
 他都市のはない、こんな言い回しが京都にはたくさんありますが、最近はこんなシャレたことを言う人があまりいなくなり、少し寂しい気がします。
 では本当のほめことばと言いますと、これがとっても少ないのに驚きます。筆者の知っている限りでは、五つしかありません。誤解のないように言っておきますが、あくまでも良い意味にしか使えない言葉のことです。
「きさんじ」…快活な。さばけている。人見知りしない。利発。
「ざんぐり」…あか抜けて自然な感じ。
「はんなり」…上品な華やかさ(主に色彩に使う)
「まったり」…トロンと穏やかな口当たり。
「シュッとした人」…姿、形の良い人。
 非常に少ないほめことばなのに、死語になりつつあります。言葉は一度消えてしまったら、二度とよみがえりません。良い言葉は、消さないでと願わずにはいられません。

※このコラムは「月刊 茶の間8月号(よろしおすえ京ことば)」に掲載されたものです。


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