誤解される京ことば

「お義母さん、行ってきます」
「お早うお帰りやす」
よそから京都にお嫁に来た人が、久しぶりに出掛けようとした時、お姑さんにこんなことを言われた。何て京都の人は意地悪なんだろうとショックを受けたと、知人から聞いた事があります。
 また、現在八十歳くらいの方で、関東地方から京都へお嫁に来て間もなく、近所のお豆腐屋さんへ油揚げを買いに行ったときの事。
「油揚げください」
「どんなこって、すんまへんな」
聞こえなかったのかと思い、もう一度「油揚げください」と言ったら、
「そやさかい、どんなこっててゆうてまっしゃろ」と怒られたのだとか。昔はこんな事がよくあったと思います。
 ちなみに、「お早うお帰りやす」は意地悪ではなく、相手を思いやる気持で、帰りを待っていますということ。そして、「どんなこって」とは「あいにく」という意味です。
 それからセールスマンが家に来て、商品を勧められた時「考えときます」と言ったら、二日後に「考えてくださいましたか」と、再度そのセールスマンが訪ねてきた。
京都人にとっては笑い話ですが、これは完全に断り文句です。
 以前にも書きましたが、これは京都人独特の婉曲表現なのです。「いらない」とは言わず「今は必要ありませんが、考えておきます」ということなのです。
 こんな場面に出会したら、意地悪と思わず、貴方を思いやり傷つけないようにと、気を遣っていると思っていただければ、ものすごぅ嬉しおす。

※このコラムは「月刊 茶の間6月号(よろしおすえ京ことば)」に掲載されたものです。


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