「しゃもじ」って京ことば?

 

室町時代になると、町衆が御所に頻繁に出入りするようになります。食物、衣類、化粧品、あるいは生活道具などを運び入れる。そうすると、御所の言葉が町衆を通じて市中に出て行き、町衆の言葉も御所に入ってきます。

 御所には、帝をはじめ宮家の人々、公家、そこに仕える女房と呼ばれる人達が生活しています。そこへ庶民の言葉が入ってくる。身分の高い御所の方々は、下々と同じ言葉を使うのは、はしたないと思われたのかどうかわかりませんが、言葉遊びをしながら隠語を作りました。
 例えば、杓子の杓をとって、下に文字を付ける(杓文字)。
すなわち「しゃもじ」となります。これを「文字ことば」と言います。どんなものでも上の一文字をとり、下に文字を付ける。イカなら「イモジ」、タコなら「タモジ」、サバなら「サモジ」などなど。
 御所の女房達は「サモジのスモジはイシイ」とゆったりした語調でおしゃべりしていたらしい。ちなみにこれは、「鯖寿司はおいしい」ということ。スモジというのは、京都だけで通じるお寿司ということばですが、標準語の中にも文字ことばは残っています。
前述の「シャモジ」もそうですが、「ヒモジイ」、「カモジ」、「ユモジ」、「クロモジ」、「オメモジ」など。
 文字ことばに限らず、標準語の中には御所ことばがたくさんあります。
「おなか」、「おひや」、「おさゆ」、「おむすび」、「おじや」、「おでん」などたくさんありすぎて書ききれませんが、なぜか食物に関する事が多い。
 食べることに関心が高いのは、昔も今も変わらないということでしょう。

  

※カモジ…髪の毛、ユモジ…浴衣、クロモジ…植物名及びそれで作った楊枝、
オメモジ…お目にかかる

※このコラムは「月刊 茶の間4月号(よろしおすえ京ことば)」に掲載されたものです。


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